退職祝いの花に照れた父

父は公務員として、コツコツ地道に40年を勤め上げた苦労人です。
今でこそ安定職業として人気の公務員ですが、昔は民間企業の方が断然人気、もちろん給与もかなり差があったような気がします。
ですから父も、本当は民間企業でバリバリ働きたかったはず。
しかし生来の腺病質体質のせいで、無理のきかない身体の父は、定時で終われる公務員の職を選びました。
それでも時々寝込んでいる父を覚えています。
また、戦時中のどさくさで学歴も高くなかった父は、なかなか昇進もできず、悔しい思いをしたことも数々あったと母から聞きました。
そんな父ですが、めげることなく仕事を続け、私達姉弟を大学まで行かせてくれました。
その陰にはもちろん、パートで家計を助けた母の努力もあります。
勤勉な両親のおかげで、私達子供は、贅沢こそできませんでしたが、不自由のない生活を送ることができました。
そんな私達も就職し、なんとか独り立ちできた頃、父が定年退職を迎えました。
決して丈夫ではない身体で40年間も働いてくれた父と、その父を支え私達を見守ってくれた母に感謝の気持ちを込めて、私達で両親にプレゼントを贈ったのですが、その時一緒に、豪華なバラの花束を添えました。
父は大きな花束に一瞬びっくりしたようでしたが、すぐに「はい、これはお前に。」と母に手渡してしまいました。
その時、照れたように微笑みつつ母を見ていた父、そして父から手渡された花束をとても嬉しそうに受け取った母。
おそらく昭和一ケタ生まれの父は、母に花束など贈った経験はないし、母は母で、バラの花束を買うような余裕があれば、すぐに私達のために使うような人でしたから、父から花束をもらうことなんて初めてだったと思います。
あれから25年、父は亡くなり母も施設暮らしですが、今でも母はバラの花が大好きです。

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